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農業全書
二/五穀
豇豆凡て豇豆と雲は、本は籬にはふ蔓さヽげお雲と見えたり、畠に種る短きも、形味も皆よく似たれば、同じくさヽげと雲なり、豇豆と名付るは、紅色多き故なりとも雲なり、莢かならず二つづヽ双び生ず、畑に作る短き豇豆、三月初灰ごえお少用ひて種べし、肥地ならば糞は用ゆべからず、六月実るお収め、其まヽうゆれば、又八月実る物なり、生長して後、つるのさきおつみ切べし、其まヽおけば蔓みだれ合て、多くみのらず、実おば朝露にもり取べし、日たけてとれば実おつるものなり、是腎の穀なりと雲て、性もよく賞玩する物なり、白さヽげ取分よし、又一種霜さヽげ(○○○○)とて、六月の末に種て、十月霜おおびて取あり、早き粟跡、又は早苗の跡にも蒔と見えたり、所によるべし、籬豇豆(かきさヽげ/○○○)には白きあり、青きあり、赤きあり、長短かれこれ品々多し、三月の節より五月の中まで、其間十日十五日お隔て、漸々に種べし、しかれば七八月まで、段々に実る、但余り早すぐれば、寒に痛み生ぜず、又生じても生長しがたし、沙地なれば、苗のやはらかなる内、きり虫切てそだちがたし、其根のまはりに、苣の葉などお置、朝ごとに其葉に虫の食ひたる跡あるお見て、虫お殺すべし、此長豇豆種る地は、冬より溝おたて、それに能こえ土お入、或はこえおもうちからし置、右に雲時節にうゆべし、間一尺ばかりおきて、三四粒づヽうゆべし、又其間も二寸あまりへだつべし、よく生長して後は二本か三本に定むべし、段々うすきこえおそヽぐべし、蔓の長さ四尺ばかりの時、さきおとむべし、枝おほく出るお、悉く籬にまとはすべしまとはざれば実ならず、夏の菜の内第一の物なり、家々に欠ずつくるべし、猶手入多し、小民なべて作る物にて、人みなしれる所なれば、くはしくは記さず、〈沙地におそく種れば、切虫きりてそだち難し、早く蒔べし、〉