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菜譜
下/穀
豇豆 さヽげお角豆とかくは非也、農政全書、穀雨の後にうふ、〈三月中〉月令広義曰、灰にて壅ふに宜し、豇豆はつる長して籬にはふさヽげ也、白あり、紅あり、へり赤きあり、いづれも味同じ、性よし、さや長きは一尺四五寸、二尺にいたる、又みじかくして一ふさに多くなるあり、いづれもさやともに煮て食す、性よし、夏菜の上品なり、民用お助る事、茄子に対す、三月の節より六月の中の初まで、間十日十五日程へだてヽ、漸々にうふべし、甚早ければ寒にいたみて不生、生じても苗長じがたし、又早くうふれば早く枯る、故に追々におそくうふれば、七八月九月の初まで実あり、五六月におそくうへたるは、八九月に実なる、平地よりひきくふかくしてうへ、漸々に糞土お置くべし、地高ければ、水お澆ぎ糞お敷に、ながれてとヾまらず、後まで少くぼめるが、糞水たまりてよし、灰糞水小便に宜し、苗の時蠹好て食す、毎朝ほり去べし、或他草の葉お根に置て、翌朝きりむしの有無お試て、有時は掘去べし、或雲、豇豆おうふるに、区(くろ)お作事方三四尺、あなおほり糞土おみてて中お空くし、まはりに円くうへまはし、蔓お生じて竹おまるく立べし、風にたおれず、苗長ぜざる間は、きり虫食しやすし、虫多きには、紙或竹皮しらんの葉お、三寸ばかりに切て、それお以茎おまけば食せず、蔓長じて後末お早くつみ、されば実多し、