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塵袋

一藤は木歟草歟草お篇にしたがへたり、かつらの類なれば草なるべし、昔し尾張国春部郡国造川瀬連と雲ける物、田お作りたりけるに、一夜の間に藤おひたりけり、あやしみおそれて、切棄ることもなかりけるに、其藤大になりにけり、其の故に此の田おばはきたと雲と雲へるとかや、此事お菅清公卿の尾州記に雲へるには、其藤漸大にして如樹、〓号藤木〈俗雲波木〉田と雲へり、藤おばはきと雲ふにこそ、如樹と雲へば、うちたへて、もとより木と雲べきにあらざるべき、仁和寺にもふちの木と雲ふ所あり、是も同心歟、