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重修本草綱目啓蒙
十五/蔓草
紫藤 ふぢ さのかたのはな〈古歌〉 むらさきぐさ まつみぐさ ふたきぐさ まつなぐさ〈共に同上〉 一名朱藤〈夢渓補筆談〉 藤花菜〈救荒本草〉人家に栽て花お賞するふぢなり、年久しき者は藤甚大にして木の如し、処処にこぶあり、ふぢこぶと雲ふ、和方書に藤〓と雲ふ、花に紫白の二色あり、紫花の者は培養によりて、穂の長きこと五六尺に至る、白花の者は穂短く、開くこと早し、葉は紫花の者より大にして厚し、一種漢種の紫藤あり色浅し、又一種重弁にして深紫色なる者あり、凡山野自生の者は花穂短し、これおのふぢと雲ふ、摂州野田の産お上品とす、花穂長し、これお野田ふぢと雲嫩葉蔬となし、飯となし食ふ、花も亦食ふべし、其実莢おなす、形刀豆(なたまめの)如くして小く、内に円扁なる豆あり、棋子の形の如し、焼食へば味栗の如し、又一種どようふぢあり、一名なつふぢ、山野に自生多し、葉至て小く色浅し、六月花お開く、形小にして黄白色、穂長さ四五寸、後莢お結ぶ、長さ三四寸、