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物類品隲
三/草
甘草〈◯中略〉 稲生先生曰、今甲斐国地方山皆有之、貝原先生曰、近世甲斐国より多く出づ、奥州にもあり、直海氏曰、古より富士甘草とて、富士山より出づと、按ずるに今官園に所有のもの、本甲斐国に出づ、然ども山中多出ることお聞ず、又其他処産するもの未見之、甲斐産苗の長二三尺、葉は紫藤葉に似て、稍小にして微毛あり、根皮紫赤色、肉黄色にして味甘し、此物甲斐国山梨郡上於曾村伊兵衛、同郡下石盛村与兵衛園中にあり、其始所出未詳、或雲、甲斐深山中より出づ、或雲、武田信玄漢土より得て植るもの、今尚存すと、何れか是なることお知ず、享保中阿部将翁軒、台命お奉じて、甲斐国に至て是お得たり、今東都及駿府官園にあるもの是なり、駿府にては甚繁茂す、東都にては繁茂せず、戸田先生非薬選曰、一種称南京様者、御園之種而人間幾希と、今官園に此種なし、又甘草苗漢土に徴すことお聞ず、