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物類品隲
三/草
黄耆 本草綿黄耆、白水耆、赤水耆、木耆等の数種あり、按ずるに白水赤水の二種は、所出の地名お以て名く、綿黄耆は蘇容曰、其皮折之如綿、謂之綿黄耆、陳承曰、出綿上者為良、故名綿黄耆、非謂其柔靭如〓綿也、松岡先生綿大戟の例お以て、容が説お優れりとす、今従之、木耆は堅剛にして、木のごとくなるお以て名く、本邦数種あり、綿黄耆 根柔にして、味甘もの上品なり、薬四鉄椎お以て、木黄耆お打て綿の如くなるものあり、用べからず、豊後産上品、茎葉苦参のごとく特生す、五六月淡黄花お開く、状槐花のごとし、花謝して後短小角お結ぶ、根直に土に入こと二三尺、皮赤色にして、甘草に似たり、肉白柔靭にして綿のごとく味甘し、丁丑主品中田村先生具之、下野日光山産上品、茎葉大抵豊後産に同じ、豊後産に比すれば、幹弱く叢生して去地数寸、根柔にして味甘し、信濃戸隠山地蔵谷産至て上品なり、其形大抵日光産に同じ、花淡黄色、又紫花のものあり、実状翹揺子(のえんどうのみ)に似て、長寸許にして扁なり、根柔に味甘して余味あり大さ一虎(ひとにきり)口のものあり、同国善光寺青山仲菴是お得たり、壬午客品中具之、木黄耆 富士山産、蔓延すること翹揺(のえんどう)のごとく、花淡黄色又紫花のものあり、根は横に延ぶ、雷学曰、凡使勿用木耆草、真相似、隻是生時葉短并根横也と雲もの是なり、根堅実にして味苦渋葉は味甘し、豊後産根甘して葉苦ものと相反す、讃岐阿野郡川東山中産、富士山のものと同種なり、日光又一種お産す、特生すること豊後の産に似たり、根堅して味苦渋なり、以上三種皆下品にして不堪薬用、