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重修本草綱目啓蒙
七/山草
黄耆 わうぎ(○○○)〈通名〉 一名百薬綿〈輟耕録〉 綿耆〈本草原始〉 甘板麻〈採取月令〉 黄嗜〈華陀内照図〉 羊肉〈発明〉綿木の分あり、〈◯中略〉京師北山中に生ずるものは、葉の形槐葉に似て、茎柔弱直上せずして地に偃して藤蔓の如し、夏月葉間に花お生ず、浅黄色、他州には淡紫色なるもあり、形豆花の如くにして小、数朶穂おなす、後角お結ぶ、小豆角より狭細中に一隔あり、子その内に満つ、形至て小く、淡褐色なり、秋後苗枯れ、春に至り旧根より叢生す、葉味甘く根昧微苦にして〓し、是木耆なり、豊後、下野、信濃に産するものは、葉味苦根味甘して柔軟なりと雲、然ども未だ四中に出でず、その加州白山、和州金剛山、駿州富士山上に生ずるもの、形状皆同じ、富士山麓に生ずる小葉紫碧花のものは別種なり、黄耆に非ず、広島種近来伝へ、花戸に誤て唐種と雲ふ、春旧根より苗お叢生す、茎幹直上し高さ三四尺、苦参の形に似たり、円かにして毛あり、葉は槐葉に似て微狭く、又苦参葉に似て毛あり、淡緑色、夏月梢葉間に花お開く、黄白色、形小豆花に似たり、後短莢お結ぶ、秋深て苗枯る、薬舗に販ぐ者漢渡は形繊長二尺許、箭簳の如し、〈◯中略〉朝鮮より来るものは味微し苦し良ならず、和産は加州白山、越州立山、和州金剛山より出す、根柔にして味甘し用ゆべし、富士黄耆は根〓し、下品なり、今広島種お河州和州に栽へて、大坂の薬舗に出す、偽て唐種の黄耆と雲、根柔軟にして白肉、黄心舶来の者に異ならず、味甘厚上品なり、