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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
薫草零陵香 一名鈴鈴香〈八閩通志〉 陵陵香〈寿世保元〉 零香草〈広西通志〉 鈴子香〈同上〉 零零香〈外科正宗〉 蕪草〈名物法言〉 丹陽草〈鎮江府志〉 多掲羅〈金光明経〉 苓香〈事林広記〉 陵香〈同上〉舶来の零陵香に豆葉様麦藁様の二品あり、豆葉様の零陵香は、一名豆様の零陵香とも呼ぶ、このもの真物なれども久く渡らず、苗お一尺許に切りて、束して葉の形ちは薄荷葉の如くして鋸歯なく、香気多し、和産漢種共にあり、麦藁様の零陵香は古渡もあり、明和七年に多く渡り、其後も追追来る、苗お一尺許に切て束たるもあり、稍長くして根お連るもあり、皆茎空く光沢あり、麦藁の状の如し、葉は小にして互生す、形は苜蓿(まごやしの)葉に似て微く長く鋸歯あり、茎頭に穂お成す、長さ一寸許、花は胡枝(はぎ)子の花に似て小し、枯物なる故、色は見分がたし、香気多し、是救荒本草に載する所の草零陵香なり、曰又名芫香、今人遇零陵香欠多、以此物代用と、今種樹家にて唐種の黄耆と称して售ものあり、即草零陵香の一種にして、黄耆にはあらず、形状麦藁様に同じく香気多し、総州に自生あり、此草子生より三年にして、苗高さ五六尺に至り、小黄花お開く、救荒本草に開淡粉紫花と雲に異なり、茎も空虚ならず、故に草零陵香の一種とす、又山海経の薫草おじやかうさうに充るは穏ならず、じやかうさうは、苗葉お撼れば、其気麝香の如し、葉お揉又乾せば、香気なし、漢名彙苑詳註の麝草に近し、増、天保十四年蛮種の草零陵香舶来す、蛮名れのんくると雲、春種お下し、高さ二尺許、茎中空にして葉互生す、三葉一蒂なり、一葉の形胡枝子(はぎの)葉に似て薄く粉緑色、梢葉は至て細し、夏月葉間に枝お分ち花お開く、破故紙の花に似て小く淡緑色、後三分許の白苞お綴り数粒攅生す、子は白芥子の大にして扁く淡褐色、夏月蒔けば冬も枯れず、生は香気なく、乾けば香気あり、救荒本草の図に能合へり、一種もろこしぐさ(○○○○○○)は、春旧根より生ず、図茎高さ一尺余葉互生す、番椒の葉に似て闊く微く紫色お帯ぶ、香気なし、六月葉間に茎お生じ、五弁、三分余の黄花お開く、子は麻仁の如し、熟して白し、