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重修本草綱目啓蒙
十四/蔓草
榼藤子 もだま(○○○) 一名藤榼子〈通雅〉 猪腰子〈同上、同名多し、〉和産なし、此子古は紅毛より来る、今は然らず、蛮国より四辺の国海浜へ漂流し来る、故に佐州、若州、紀州、但州、土州、薩州、筑前等の国、其他諸州にあり、皆海藻中に混ず、故に拾ひ得る者あれば、誤認て藻実とす、因てもだまの名あり、或は蛮語なりとも雲、其子形円扁、大さ或は一寸、厚さ三分許、或は二寸、厚さ四分許、大小常ならず、栗殻色、或は赤お帯、或は黒お帯ぶ、其肌へ或は糙澀、或は光滑、其一頭お横に切り、内の肉お去て薬瓢(いんろう)とし薬お入る、その皮甚厚〓、故に薬お貯べし、この実全き者は外に大莢あり、闊さ三寸許、長さ二尺余あり、故に角如弓袋と雲、子中の肉色白し、鮮なる者は夏月地に下して生じ易し、其藤線稜ありて糸瓜藤(へちまのつる)の如し、葉は木通葉に似て左右各二つ、四葉一蒂にして末に二鬚ありてものに纏ふ、年久くなれば左右各四にして八葉一蒂となる、其一葉お離せば形長く尖りて、南天燭葉の如し、光沢あり、蔓と共に深緑色甚寒お恐る、