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重修本草綱目啓蒙
十六/石草
酢漿草 かたばみ(○○○○) かたばみぐさ(○○○○○○) すいもぐさ(○○○○○) すいものぐさ(○○○○○○)〈尾州〉 すいぐさ(○○○○)〈雲州〉 すぐさ(○○○)〈江戸〉 すかんこ(○○○○)〈津軽〉 すかすか(○○○○)〈南部〉 はすぐさ(○○○○)〈相州〉 こがねばな(○○○○○)〈筑前〉 こがねぐさ(○○○○○)〈肥前、讃州、〉 かんがみぐさ(○○○○○○)〈防州〉 かヾみぐさ(○○○○○)〈石州〉 かまくさ(○○○○)〈播州〉 たまくさ(○○○○)〈同上〉 すヾめのはかま(○○○○○○○)〈仙台〉 とんぼぐさ(○○○○○)〈江州〉 とんぼのきうり(○○○○○○○)〈加州〉 すヽも(○○○)〈泉州〉 三谷六葉草〈俗名〉 一名醋啾啾〈附方〉 三葉酸漿草 酸草 醋草 雀児草〈共同上〉 歳寒漿〈八閩通志〉 鵓鴿飯〈医学六要〉 布谷飯 酸梅草〈共同上〉 鷓鴣飯〈証治大還〉 酸車草〈医学入門〉 鳩漿草〈証治準縄〉 鹹酸草〈閩書〉 酸齏草〈古今秘苑〉 蟠蜞青〈茹草編〉庭間に多く生ず、小草なり、地に蔓延し、葉互生す、形三弁、弁ごとに一欠ありて、かたばみの紋と呼ぶ状に同じ、大さ三五分、肥地にある者は大さ一寸許、蔓も亦長し、二三月花お開く、黄色五弁、大さ三分許、他時にも亦花あり、野州中禅寺には粉紅色なるものあり、花後円角お結ぶ長さ四五分、熟すれば自お裂けて内子飛出す、其子小にして白色落て苗お生ず、一種葉色紅紫なる者は赤孫施なり、花中に紅色あり、あかかたばみ(○○○○○○)と雲ふ、一種えいざんかたばみ(○○○○○○○○)と呼ぶあり、葉大にして一寸余、肥たるもの二寸余、葉末に尖りあり、春花お開く、白花大さ七八分、又淡紅色なる者あり、花後新葉お生ず、根上一寸許鱗甲おなす淡紅色、これ旧葉の蒂の残れるなり、〈◯中略〉増、天保十四癸卯年、蛮舶大葉の酸漿草(○○○○○○)お齎来す、蛮名おぎさとりすろーざと呼ぶ、七月旧根より苗お生ず、高さ七八寸許、一根十余葉叢生す、三葉一蒂にして淡緑色、形えいざんかたばみの葉に似て、葉頭に微しく凹みあり、一葉の大さ径二寸余に及ぶ、八月に至て葉中茎お抽ずること七八寸余、茎頂に細枝七八条お四方に分ち、一層おなし、枝の末ごとに二寸余の細蒂お生じ、蕾お綴ること各両三許、一茎生ずれば一花お開く、その花必ず横に向ひ、淡紅色にして大さ七八分、本は筒子にして末五弁、互に相重りて盞子様おなす、筒中に短き黄蕊五条あり、この花形色共にさくらさうの花に能く似たり、花謝して後、層中より又枝お生じ、花お開くこと始の如く、肥たるものは三層に至る、冬お経て枯れず、五月に至て苗葉共に枯る、