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重修本草綱目啓蒙
八/山草
白鮮 ひつじぐさ〈和名抄〉 一名検花根〈村家方〉 増一名白羊羶〈正字通〉漢渡のもの真物なり用ゆべし、古渡は心なく皮のみにして色白し、新渡は心お去らず、全根なり、形ち長大にして色にうるみあり、和産は未詳ならず、今漢種白鮮と呼者二品あり、その一は葉小く椒葉の如し、その一は葉大にして野薔薇葉の如し、寛政午年に来る、白鮮皮中に苗葉お連る者あり、其葉今栽るところの大葉の者に異ならず、根味も同ければ、此品真なるべし、古説に、はなしのぶ、一名くさしのぶ、はるぐわつかうと雲草お充れども穏ならず、其草は種樹家に多く栽ゆ、春宿根より生ず、苗の高さ二三尺、葉は崖椒(いぬさんせう)又皂莢(さいかち)の葉に似たり、四五月茎端に五寸許の穂おなす、花の形桔梗に似て五弁、大さ三四分、色紫碧又白花もあり、実は房おなす、南天(なんてん)燭子より小し、熟して褐色、根は甚細く用ゆるに耐へず、今一種大葉の者あり、花も大なり、倶に真に非ず、又こまつなぎ、此お以て本条に充るも亦非なり、こまつなぎは救荒本草の馬棘なり、増、文化年間以来、花戸に唐種の白鮮一名金雀児椒と呼ぶ者あり、木本にして一株数条お生ず、大抵伏牛花(へびのぼらず)の輩に似て、高さ四五尺にも至る、春月新葉茎に互生す、四葉排生して一葉となる、一葉の形水〓樹(いぼた)葉に似て、深緑色にして微く〓し、又迎春(わうばいの)花の葉にも似たり、葉茎の本に両刺あり、四月葉間に花お開く、赤小豆花に似て黄赤色なり、花謝して後小き莢お結ぶ、根は長く皮厚くして臭気あり、その金雀児椒は白鮮の一名なれども、白鮮の類には非ず、これ救荒本草の壩歯花なり、