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重修本草綱目啓蒙
十三/毒草
沢漆 一名柳漆〈郷薬本草〉 猫児睛〈救荒野譜〉 猫眼〈説嵩〉 猫児眼草〈石鐘乳気味〉李時珍は古より沢漆は、大戟苗或は花なりと雲の説お駁して別のくさとす、これ本経に無毒の文に符す、よろしく従ふべし、大戟の苗は毒あり、時珍の説はすヾふりぐさ、〈佐渡、勢州、〉とくだいぐさ、〈京〉かやつりぐさ、〈伯州〉みこのすヾ、〈備前〉ぜにつなぎ、〈越後〉とうみやうさう、〈備後〉野に自生し、八九月に実生ず、春に至り一尺許、瘠地の者は七八寸、一根一茎茎円にして、葉互生し、密に著く、馬歯莧(すべりひゆの)葉に似て薄く細鋸歯あり、葉お摘めば白汁出づ、三月茎頭に五葉対生し、五枝お分ち四弁の小花お開く、緑色、一茎五枝なる故、倒にして銭おつなぎつらぬくべし、故に銭つなぎと名く、夏に至り根苗共に枯る、一種小なる者あり、雌のとうだいぐさと雲ふ、水中又水辺にも生ず、陸地にはなし、初出の葉は形ち円にして石胡荽(ちどめぐさの)葉の如し、五つの鋸歯ありて尖らず、深緑色、地にしいて生ず、春に至て高さ三四寸、茎葉淡緑色に変じ、葉の形も変じて、とうだいぐさに同して、梢に五枝お分ち花お開く、五弁、緑色にして黄蘂、花後短かき莢お結ぶ、長さ一分、闊さ二分許り、熟して自ら中解すれば、浅鞨の形の如くして色黄なり、中に至て細なる褐色の子多く盛る、形色猫眼に似たり、故にねこのめと雲ふ、摂州住吉にてみづげんげと雲ふ、釈名中の猫児眼睛草お別てこの草に充つ、先師の説なり、又ねこのめの一種、深山幽谷土石上に生じ、四時ともにあり、円葉にして厚く大さ七分許、深緑色にして紋脈多し、四葉方布す、故によつ葉ゆきのしたと雲、三月花あり、山中にては四月に花お開く、ねこのめに同じ、