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古今要覧稿
草木
ほるとさうほるとさう、一名こくどさう、一名朝鮮やなぎは、漢名お続随子、一名拒冬、一名拒冬実、一名耐冬花、一名百両金、一名千金子、一名菩薩豆、一名蜀随子、一名白随子、一名聯歩、一名反時生、一名半枝蓮といふ、此種はいづれの国にても、山野に絶て自然生なきものなれば、そのもとは天平のむかし、太宰府より漢種お伝へしが、代々にうへつぎこしものにて、国産にてはあるべからず、所謂ほるとさう、またこくとそうの名ありといへども、これは近世の俗名にして、延喜の比には、たヾ続随子の字音のみにて通用し、さらに和名なきにても、此種の国産にあらざるはあきらけし、然るお讃岐国瀬島といふ所に、此物の自然生あるよし、物類品隲にみえたれども、これは中むかしの比、何人か漢種お得て、その地に播蒔せしが、今にいたりても年ごとに生出るものなるべければ、これお以て国産の証とはなし難し、扠続随子はその苗葉花実すべて大戟に似て、たヾ長大なるお異なりとし、その功能に至りても、また大戟沢漆輩のに似て、専ら利水解毒の要薬なりといへども、大戟は根、沢漆は茎葉お用ひ、此物は子お用ゆるお異なりとす、又本草和名に続随子施用多験といひ、いはゆる百両金、また千金子などの名によりても、古に此ものお貴みて、用ひし事はしられたり、今はたヾ紫金錠の料のみに用ひて、解毒の功お知るといへども、利水の薬に至ては、絶て世の人用ゆる事おしらざるは、さらに古お考へざる也、