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倭訓栞
前編二十九/末
まさきのかづら 古語拾遺に真辟葛と書り、古事記に天之真拆と見ゆ、されど真栄の義なるべし、常葉に栄ゆる葛也、神事に専ら用るは、真幸の義とも取れるなり、延喜式に真前葛と見え、日本紀の歌にまさきづらとよみ、万葉集に冬〓蕷葛(ひさきつら)、又冬薯蕷(まさき)都良とも書り、いや常(とこ)しきにとも、尋(つき)てゆければともつヾけるは、常磐に長くはひ続くおいふなり、薜茘也といへれど、薜茘はいたび也、杜仲(まさき)の葉に似て小に蔓生するもの一種ありて、蔓甚長く、皮中に木綿あり、是也といへり、仙覚はさねかづらと訓じたれど、古今六帖に、まさきかつらとて、右の万葉の歌入たり、