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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
赤車使者〈◯中略〉増、赤車使者はつりふねさうなり、集解蘇恭の説参考すべし、山中渓澗の傍に生ず、高さ一二尺、多く枝お生じて横に繁茂し易し、その茎紫赤色、多く水気お含み、透明潤徹にして蚯蚓の色の如し、茎の背は淡緑色なり、葉茎に互生す、形香薷(なぎなたかうじゆ)の葉に似て大なり、又羅勒(めはヽき)の葉に似て長し、大抵長さ二三寸、闊さ一寸五分許にして、前後頓に尖る、秋に至て葉間ごとに細枝お垂て、其末に花お開く、横に長きこと一寸五分許、恰も船お釣たる形の如し、故につりふねさうと呼ぶ、花後莢お結ぶ、実お蒔て生じ易し、又きつりふねと雲あり、尋常のものより嬌嫩にして、茎葉共に淡緑色なり、甚だ水気お含む、秋に至て黄花お開く、花の形微しく異なり、くちなはじやうごは赤車使者の一種なり、