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倭訓栞
前編七/幾
きわた 木綿の義、布花ともいへり、今世に行はるヽ物の俗称也、西竺には太古より有しかども、宋の末に始て種お伝へ、朝鮮には元より種お得たり、我邦には天正永禄の頃より渡来し、万民日用の要物となれり、紅毛語にかとうんころいといふ、かとうんは綿也、ころいは草なりといへり、花お蝶といひ、実お桃といふ、似たるおもてなり、本草にも如桃といへり、凡そ木綿と称するもの四品あり、上古我邦にゆふとよべる是一種、彼邦にて杜仲の一名にいふもの是一種、蛮名ぱんやと称するもの是一種、今の綿花布是一種也、近年一種の木わたあり、高さ七八尺に及、桃は常の如く、実ほそ長して小也、又一種あり、其実丸くて小也、棉花と称す、肥後に安永の初に、紺色の綿できたり、一年にして絶にき、