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百姓伝記
十一
いちびお作る事いちびお蒔に、土地に嫌ひなく、地深き処に蒔べし、麻と異なるものなり、冬春迄に蒔、夏の土用の内にこぎとりて、葉お取捨よく日に干て、其後水につけて取揚げ、筵菰お敷き、いちびお積重ね、又上に筵菰おかぶせねさせ、皮おはぎて見よ、からに取付かずして能むける、ね加減まへかたにてはむけ兼る、又ねかし過ては弱なる、其の見分け肝要なり、むき取たるいちびお、竹のわりこはしにて上皮おこきすて、水にて洗ひ日に干し、麻の代りに使ふ、第一大船の錨綱、其外太布も織、馬道具に用て徳多し、