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重修本草綱目啓蒙
十八/葷辛
菫(○) はたくぜり(○○○○○)陸生の芹なり、食用のみつばぜりも、この一種なり、恭説の菫菜は、円葉の紫花地丁なり、こまのつめと呼ぶ、数品あり、葉円にして尖り、蕺菜(どくだみの)葉の如にして鋸歯あり、又円にして尖らざる者あり、大小異形なる者一ならず、花に深紫淡紫白色の別あり、形は皆紫花地丁に同じ、又蔓生の者あり、此にも円葉長葉の品あり、花は皆淡紫色なり、禹錫の説は、紫花地丁也、湿草類に本条あり、時珍の説に、黄花なる者お即毛芹也と雲は非なり、毛芹は毛茛(むまのあしかた)なり、大観本草に、菫黄花害人と雲ふお優れりとす、是れきけまんなり、一名うばころし、〈土州〉おばころし、〈同上〉へびにんじん〈江州〉もヽちどり、〈江戸花戸〉ひとこへよぼり、〈勢州〉わうきん、此草は路傍樹陰、或は垣砌の間に多く生ず、四時枯れず、苗は紫菫(むらさきけまん)に似て白色お帯ぶ、これお断ば黄汁出、甚臭気あり、花も紫菫の花に異ならずして黄色なり、時ならずして常に開く、大毒あり、