[p.0384]
大和本草
七/花草
秋海棠 名花譜曰、一名断腸花、嬌冶柔軟、真如美人捲〓粧、性喜陰見日即瘁、九月収枝上黒子撒於地上、明春発枝、老根過冬者花発更茂、寛永年中中華より初て長崎に来る、それより以前は本邦になし、花の色海棠に似たり故に名づく、其葉左に顧るあり、右に顧るあり、他草に異なり、第一葉左に顧れば、第二葉は右に顧る、上下かはる〳〵左右に顧る、六七月花おひらく日お畏る、日にあへば色変ず、陰地にうふべし、日あてにうふれば枯る、北の屋かげ垣根に宜し、間ひろくうふべし、葉大なる故なり、沙土お好む、黄〓土に宜からず、零余子に似たる小子あり、子おまきて生ずるは、二年にして花さく、或曰、子おまきて糞おそヽげば、当年花さく、宿根より生ずるは年々さく、大風に破れやすし、七月初より小竹お立て助くべし、花鏡曰、為秋色中第一、又曰澆糞即萎、