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重修本草綱目啓蒙
十六/石草
仙人掌草 さんぼてい(○○○○○) さぼてん(○○○○) さんぼて(○○○○)〈予州〉 いろへろ(○○○○) さちらさつぽう(○○○○○○○) とうなつ(○○○○) とうなす(○○○○)〈薩州〉 によろり(○○○○)〈予州〉 一名覇王樹〈八種画譜〉 仙人掌〈秘伝花鏡〉花家に多し、寒国にては冬腐り易し、形手掌の如にして長し、大小等しからず、緑色、又黄瓜(きうり)お圧し扁めたるが如し、体に疣刺多し、縦横に一二層おなし、或は数層、或は傍に数枝分つ者あり、至て大なる者は丈余に及ぶ、夏花お開く、生処定まらず、或は頂にあり、或は傍にあり、大さ二三寸許、重弁赤黄色、千葉黄榴(きざくろの)花の如く、或は小蓮花の如し、暖地にては花後実お結ぶ、長さ二三寸、五稜にして両頭狭し、熟する者は地に下して生じ易し、この物夏中は甚だ生活し易し、幾段に切り栽ゆるも皆生ず、増、〈◯中略〉一種きりんかく(○○○○○)と呼ものあり、即慎火の円きものなり、その形胡瓜(きうり)の如く直立して幹状おなし、深緑色にして縦に五稜あり、稜上ごとに小瘤お起し葉お生ず、五葉互生して円く茎お囲み、層おなすこと数十葉、卒に見れば対生互生の別なきに似たり、葉蒂の本に細刺二条あり、葉の形楠(ゆづりは)の葉に似て、本狭く末闊し、鋸歯なく、毛刺なく、厚して深緑色なり、葉中の縦〓背に起発して剣脊の如し、長ずるに随て落葉して、茎には葉痕と刺お存す、甚寒気お畏る、冬月土窖に育すれば落葉せず、〓挿して能活す、