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重修本草綱目啓蒙
二十二/水果
芰実 みずもぐさ〈古歌〉 ひし 一名翻鶏〈事物異名〉 紫角 子陵〈共同上〉 胡速児〈事物異名、蒙古の名、〉 菱角〈本経逢原〉 水菱〈本草蒙筌〉 蟾蜍股〈事物紺珠〉 未栗実〈郷薬本草〉 菱栗〈村家方〉 花一名水客〈事物紺珠〉 穿萍〈名物法言〉水沢中に多く生ず、根は水底にありて、葉は水面に叢生す、形扁して蛺蝶の翅の如く、厚くして光りあり、其茎ふくれて蝦蟇の股の如し、夏花お開き実お結ぶ、形三角四角或両角あり、その角皆尖りて人お刺す、初緑色秋に至り熟すれば黒色、煮て白肉お採り食ふ、これおゆでびしと雲ふ、時珍の説に、野菱家菱の別あり、形小なる者は野菱なり、形大なる者は家菱なり、〈◯中略〉増、ひしの葉は七八葉排生して水面に浮ぶ、夏月四弁の黄白花お開く、大さ五分許あり、又実の小なるお野菱とし、大なるお家菱とする説は穏ならず、この根お水田に栽て培養したるお家菱とし、野生のものお野菱とす、野山薬家山薬の例なるべし、