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草木育種
下/薬品
人参〈本草〉 朝鮮種人参なり、植る土地は山にて高き所よし、白めなる砂地に猶宜、人参耕作記、又物類品隲に黒ぼくに植ると雲、この黒ぼくは今雲黒ぼく土とは別の物歟、今雲処の黒ぼくに植る時は根腐易し、赤土に白めなる砂お等分くらいにまぜたる土に植べし、人参に相応する地は、下野国都賀郡日光山、信濃国など皆白めなる砂地にてよく出来るなり、植る所より南の方に並木ありて、南風の塩気有お防、北風の陰気お入べし、故に海辺にては長ぜず、植るには竹の簀おあみ、土中へ埋、〓鼠お防べし、多作には〓鼠お狩べし、〈法は上巻に見へたり〉実ばへの内は搭棚お低作、北お高、南お低、杉皮にて葺、橑檐の如く拵、日と大雨お除るなり、人参三四歳に至ば、葦簾或女竹お編て平にかけ置べし、雨滴人参にかゝりても苦からず、却て勢気お益ことあり、肥は荏の実お蒔芽お生じたる時墾(こなし)、又荏の茎お土へ切まぜたるもよし、又夏の内人糞お土へまぜ置、寒にいてさせたるお、根廻へ切まぜ置べし、植付たる所へ直に肥お用れば、蘆頭腐もの也、植替るには、右の肥土おまぜて植べし肥過分れば種々の虫お生ずる也、人参は夏実のり、赤くなりたる時採て土にまぜ、土中に埋置、十月に至て植る時、右の荏お切まぜたる土お入、実お植べし、初より人糞お用るは悪し、二年めより少づゝ土へまぜ用べし