[p.0406]
重修本草綱目啓蒙
八/山草
柴胡 あまあかな(○○○○○)〈古名〉 のぜり(○○○)〈同上〉 今は通名 一名蘆頭豹子〈輟耕録〉 山芹〈村家方〉鎌倉柴胡(○○○○)真なり、即集解に竹葉韭葉と雲もの是なり、春未だ薹立ざる時、地に叢生する、葉は細長し、これお韭葉とし、薹たちて後は葉短し、これお竹葉とす、二物あるに非ずと、炮炙全書に雲へり、然れども今国によりて闊葉の者一種あり、是竹葉柴似(○○○○)なり、其尋常の者は韭葉柴胡(○○○○)なり、今は鎌倉より柴胡お出ざれども、その初鎌倉より出せし故、旧に仍て今も鎌倉柴胡と称す、今薬四に鎌倉柴胡卜称するもの偽雑多し、用ゆるに堪へず、みしま柴胡(○○○○○)卜呼ぶもの佳なり、柴胡は京師四辺に産せず、勢州、紀州、中国、四国、九州、その余諸州に生ず、葉は麦門冬(やぶらん)葉に似て短くうすく竪条多し、又稍闊くして〓竹(ちまきざヽ)葉に似たる者あり、皆茎に紫条あり、秋に至て長さ二三尺葉互生す、形漸く短小になり、葉間ごとに枝叉お分ち小花お開く、攅簇すること、芹の花の如く黄色にして、茴香花の形の如し、実も茴香に似て小し此実おまきて生じ易し、又城州白川山に大葉なるもの一種あり、大柴胡(○○○)と呼、又ほたるさう〈同名あり〉とも雲ふ、葉最大にして紫萼(ぎぼうし)葉の如く、長さ一尺余、闊さ二三寸、秋に至り粗茎お起し、高さ六七尺、枝の末ごとに花お開く、花実亦相同して微大なり、是集解に謂ゆる南柴胡にして最下品なり、舶来の者は唐の筆防風の形の如く、蘆頭に毛あり、今は希なり、和は単蘆にして細長く、澀味なきものお真とす、今薬舗に鎌倉柴胡と称するものは、薩州肥後辺より出す、数蘆連生し澀味あるものお雑ゆ、是南柴胡根にして下品なり、三島柴胡と称するものは東国より出す、此には単蘆なるもの多し、薬用に入るべし、