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大和本草
六/薬
当帰 山州長池の辺に多くつくる、江州胆吹山の自然生は、根形小なれども、乾して香気甚しく油色の如し、自然生と甫にうふると形味不同、自然生は形小し、甫にうふれば大也、凡薬は中華の産お為佳、然長池の当帰大和の地黄は唐にまされりと雲、伊吹山の外にも高山処々にあり、甫に栽るに風ふき通ぜざる所にうふれば、花開くことまれなり、当年生ずる地おかへ、他所にうつし、三年に至りとれば、根大也、其年にとれば小なり、植処のめぐりに他草生ぜば抜去べし、生なる時煮て食するに味よし、生なるお其まヽかげ干したるは、年おへても潤あり、味甘く虫はみやすく、久しく保がたき故、薬店にあるは皆蒸煮てほしたる物也、故性よはし、長池より来る生なるお乾して、熱湯に浸して又乾べし、如此すれば虫くはず、性よし味最よし、よく乾たるお口せばき壷に入て固く封じ、時々ほせば虫はまず、身尾ともに其まヽおけば虫はみやすし、身と尾と別に悉く引さくべし、大なるは二に割るべし、刻み置て日久ければかび生じ、気味ぬけてあしし、