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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
白芷 よろひぐさ(○○○○○)〈延喜式〉 さいき(○○○)〈信州〉 むまぜり(○○○○)〈勢州〉 やまうど(○○○○)〈作州〉 かんら(○○○)〈勢州〉 今は通名 一名神〓〈王氏〓苑〉 三閭小玉〈輟耕録〉 蘭槐〈荀子〉 沢芳〈典籍便覧〉 杜若〈名物法言〉 芳草〈事物異名〉 仇里竹根〈郷薬本草〉 仇里大根〈村家方〉 増、一名都梁香、〈本経逢原〉舶来の白芷二種あり、一種車切と称するは、根の大なるお輪切にしたる者にて、是古渡なり、今はなし、又一種吸口様と称するは、根細して烟管の吸口の如し、是上品なり、今渡るもの皆此のみ、漢種は享保年中に渡ると雲へり、苗は和産に同して根に香気多し、和産は山城及び大和に多く栽ゆ、葉は大葉の川芎に似て、一寸許の葉枝お分て多く著きて、二三尺の大さになる、皆周辺に鋸歯あり、大葉の川芎より闊くして、背に粟紋あり、苗高さ七八尺葉互生す、花は小く白して胡蘿蔔の如く繖おなす、又大葉川芎の花実にも似たり、凡そ秋日下種すれば三年にして花実あり、根堅〓にして用るにたへず、冬に至りて苗根枯腐す、故に八月に種お下し、翌年の秋根お采るべし、城州富野にて作るは、肥地に種へ、根大なる故香気薄し、和州宇陀にては瘠地に種へ、糞力お借らず、故に香気あり、奥州南部の自然生最良なり、根細くして香気多し、舶来の白芷に石灰のつきたるあり、これは白芷蛀み易く、並に色白からんことお欲してなりと時珍も雲へり、