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重修本草綱目啓蒙
八/山草
防風 はまおほね〈延喜式〉 はまにがな〈和名抄〉 はますかな〈同上〉 一名曲方氏〈輟耕録〉 屏風菜〈村家方〉 山花菜〈鎮江府志〉 防丯〈万痾必愈〉享保年中に渡る所の唐種、和州の宇陀、城州八幡にて栽へ出す、葉の形白頭翁(おきなぐさ)葉に似て大に厚く、毛なく光滑なり、色白お帯て防葵の葉の色の如し、一根数十葉叢生す、三年の者は薹お起す、高さ三尺許、枝叉お分こと甚繁し、夏秋細叉ごとに花お開く、砕小白色芹の花の如し、実は独活の如し、已に実お結ぶものは根枯朽す、故に根お採る者は二年お良とす、三年なるものは根〓く用るにたへず、凡そ諸薬草大抵此のごとし、江戸にて栽る者は根甚長く、三四尺に過ぎ、径四五分にして白色なり、京師の官園、及び和州にて栽るものは、根長さ一尺五寸許にして淡白色なり、是土地に因りて然り、根お切ば内に黒き圏あり、此お本草原始に金井玉欄と雲、その内に菊花紋(きくざ)あり、薬用上品とす、然ども京師の薬舗へは宇陀より少し出すのみなり、諸州にこの種お栽て宜しかるべし、今舶来の者は形小く、蘆頭上に葉の茎お一寸余連ねたり、その形禿筆頭の如し、故にふで防風と雲ふ、真物なれども皆陳久にして虫〓多し、今薬舗にて真の筆防風(○○○○)と雲あり、一名伊吹防風(○○○○)、山人参、青 葉防風、江州伊吹山の自然生なり、根細長く六七寸にして堅実なり、肥地に栽るものは微く潤ひあり、その葉は胡蘿蔔葉に似て、細小にして毛なし、深緑色薹お起すこと二尺許、多く枝叉お分ち、小白花簇生すること芹花の如し、子も芹子の如し、是即邪蒿(やまにんじん)の一種、細葉なるものにして防風の類に非ず、又別に一種諸州に山人参(○○○)と呼ぶ者あり、葉略芹の葉に似たる故、芹葉の防風とも雲、京師白川山に多き故、白川防風とも雲、葉〓くして光りあり、初めは数葉叢生す、秋に至れば茎高さ二三尺許り、枝梢に花お開く、花実共に川芎に同じ、根は長六七寸黄白色にして〓し、是集解の石防風なり、本草原始に俗山防風と雲へり、此根舶上遠志中に多く混入すと雲ふ、又薬舗に削り防風、一名五島防風、木防風と雲あり、是れ即防葵なり、毒草類に本条あり、亦防風に非ず、人参類にては牡丹人参、御免人参と称するものなり、此根白して大なり、竪に割て乾す、故にけづり防風と雲、又別に浜防風(○○○)あり、春中菜店に嫩葉お貨り食品とす、故に八百屋防風とも雲、又伊勢防風とも雲、海浜に自生す、根皮黄赤にして疙疸あり、常州、羽州、奥州、肥前の五島より薬舗に出す、是菜類にして防風に非ず、