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重修本草綱目啓蒙
二十二/味
鹹草 はちじやうさう(○○○○○○○)〈大和本草〉 あしたば(○○○○) とうだいにんじん(○○○○○○○○) いぬさいき(○○○○○) かいほうにんじん(○○○○○○○○)本八丈島より来る、今市中に多く伝へ栽ゆ、俚俗彼の島には痘瘡なしと雲、故に栽て厭勝とするなり、葉は独活の葉に似て大に厚して、光ありて色浅し、茎葉お切れば黄汁出づ、凡そ子生より三年に至て、台お抽で高さ三五尺、葉互生す、五月枝梢ごとに花お開く、砕小にして白色、数百傘おなし、独活花の如し、実も亦形同して大なり、熟すれば根枯る、子お下して生じ易し、往年嫩根お採り、製して和人参に偽りしことあり、故に今にとうだいにんじん等の名残れり、この草自ら鹹味あり、故に大和本草の説に従ふて鹹草とす、然れども的当にはあらず、諸州海浜におにうどと呼ぶ草あり、形状八丈草に異ならず、隻黄汁出でず、毒草なり、