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甲子夜話
四十七
去年八丈島のことお掌とる同心に憑りて、其種〈◯鹹草〉お得、当春の彼岸に蒔きて、明日やはゆると待てども、十日お経ても生ぜず、人々も不審しいる中、或日〈卯月の頃〉永代橋の辺お過しとき、八丈の問屋にあるお見たれば、彼草の雲々お問たるに、この草八丈にては如斯なれども、他邦に移して蒔けば、曾て生ぜずと答へき、尚試むべきなり、