[p.0444]
甲子夜話
四十九
蕉子話す、日光山廿日御霊屋道傍の渠の水あせたる所に、九輪草火しく生じて、花お開き美観なりしかば、案内の僧に如何にしてかくは此草多きやと問しかば、この渠の上に九輪沢と雲ふあり、その沢水流れてこの渠に入る、九輪沢辺は皆此草なり、自然と其種流れ来て実に生るなりと答ふ、是まで何ゆえに九輪と雲ふや知らざりしが、是にて其名お得る所以お解したり、