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古今要覧稿
草木
くたに〈◯中略〉今按りうたんにくたにの和名あるごとくいふはひが言なり、すでに和名類聚抄にも、竜胆〈和名にかな、えやみくさ、〉とあげて、くたにの和名は見えず、こはりうたんの字音よりして、後におしあてたる誣説にて、あたらぬことなり、くたにのりうたんにあらざる証は、源氏もの語おとめの巻に、夏のかたの前栽に、さうびくたにおうえられたること見えたり、これに仍て考ふるに、りうたんは本草綱目啓蒙等に見えたるごとく、暮秋より初冬へかけて、花さき実おむすぶものにて、夏のものにあらず、しかれども夏のかたのせんざいにも、春秋の花おまぜてうへられしよしあれば、いかヾとおもふ人もあるべけれど、さにはあらず、それはさうびくたにの外に、春秋の花はまぜてうへられたるにて、いかでか夏のかたのせむざいに、夏の花お置て、春秋の花お詮とはうへられべき、