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重修本草綱目啓蒙
八/山草
竜胆 りんだう(○○○○)〈竜胆の音転なり〉 にがな(○○○)〈和名抄〉 えやみぐさ(○○○○○)〈同上〉 くだに(○○○)〈古歌〉 おもひ(○○○)草〈同上〉 あぜ桔梗(○○○○) おこりおとし(○○○○○○)〈播州〉 さヽりんだう(○○○○○○)〈奥州、勢州、〉 一名斜枝大夫〈薬譜〉 斜枝大士〈輟耕録〉 観音草〈郷薬本草、東医宝鑑、〉向陽の山野に多く生ず、葉は竹葉の如にして短し、故にさヽりんだうと雲、葉両対し三縦道ありて桂葉の如し、円茎高さ一二尺、肥地に生るは三尺許、八九月茎梢或葉間ごとに、三五花お開く、花の本は牽牛花の如く、筒形おなす、末は五弁に分れて桔梗の花の如し、青碧色愛すべし、昼は開き夕には収ること数日、後小莢お生ず、冬に至て苗枯る、又細葉の者あり、葉の闊さ一分長さ二三寸、紀州の熊野に産す、救荒本草に図する所によく合す、花戸には白花もあり、又白花にして弁の外淡紅なるあり、うらべに(○○○○)と雲、又ふじりんだう(○○○○○○)あり、淡紫色なり、又蔓生あり、是は深山陰地に生ず花微し、早くして淡紫色、形ちは同じくして微小、後花中に実お出す、桃葉珊瑚(あおき)実の如し、冬に至て熟して赤し、春に至て尚存す、これおつるりんだう(○○○○○○)と雲ふ、又春りんどう(○○○○○)は陽地に生ず、高さ二三寸、四月茎梢に花お開く、一二蕚或は四五蕚簇生す、形は竜胆と同して小し、日中に開き暮に収る、葉は円小にして尖る、伊勢にては水沢中に生ず、方言さはぎヽやうと雲、水泥に種へ、蛍籠の中に入るヽと雲、集解の山竜胆ははるりんだうなり、本草彙言に石竜胆に作る、嶺南にては小なるお石と雲、いとすヽきお石芒と雲例の如し、