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重修本草綱目啓蒙
十四/蔓草
牽牛子 あさがほ〈和名抄〉 けにごし〈古今集〉 一名仮君子〈輟耕録〉 三白草〈村家方〉古あさがほと雲は木槿なり、故に万葉集秋七種歌にあさがほと雲ふは牽牛にあらず、牽牛は人家に多く種ゆ、花青碧色の者お黒丑と雲、又黒牽牛とも雲ふ、又白色のものお白丑と雲、又白牽牛と雲なり、葉の形皆三尖にして互生し微毛あり、品類猶多し、花鼔子(ちやるめる)の形おなして五尖ある者は尋常のものなり、又五弁筒まで切れたるものあり、又花頭五尖なるものお桔梗ざき(○○○○)と雲、葉も亦五尖なり、其円弁なる者お梅ざき(○○○)と雲ふ、尋常の花の形にして、中に小弁あるものお孔雀(○○)と雲ふ、紫あり、淡紫あり、紅あり、浅紅あり、間色なるものあり、碧白相間る者お黒白江南花〈秘伝花鏡〉と雲、俗にまつやまあさがほ(○○○○○○○○)と雲、又藍色にして紅点なるものあり、又千葉にして間色なるものあり、弁多して重し、故に正開する時は茎自ら折て実お結び難し、集解、時珍曰、白者人多種之雲雲、此草ははりあさがほ(○○○○○○)なり、一名てうじなすび、とうなすび、まんばらす、或はもんばらすとも雲ふ、寛延の始薩州の商人此種お携へ来る、今は諸州に多く栽ゆ、春月種お下すこと牽牛子の如くす、葉は何首烏葉の如にして光あり、藤に桑刺あり人お傷らず、花牽牛花に同くして小く淡紫色、筒に近して色深し、申の時開て戌の時萎む、故に今俗ゆうがほと呼ぶ、其蒂肥て柔刺あり、甚茄の蒂に似たり、上に房お結て牛奶茄(ひとくちなすび)の形の如し、熟する時は白色微褐牽牛子殻の如し、内に子あり、子形亦同して微大白色、其嫩なる者は食ふべし、これ救荒本草に載する所の丁香茄児一名天茄児なり、白牽牛に非ず、時珍の説誤れり、白牽牛は白花の牽牛お以て真とすべし、一種ひらぢくあさがほ(○○○○○○○○)と雲者あり、茎の形羈王樹(さぼてん)の如にして毛茸あり、厚さ一分余、闊さ三四寸に及ぶ、花の形尋常のものに同ふして、色に数種あり、葉の形三尖ありて茎に互生す、唯梢葉は女青(へくそかづら)葉の如く長くして、左右に尖りなし、又一種矮生の者あり、高さ四五寸に過ぎず、茎〓くして蔓延せず、これお木あさがほ(○○○○○)一名二葉あさがほと雲ふ、