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草木六部耕種法
十/需花
牽牛は近来大に用ひらるヽお以て、種々の珍花多く世に現れ、其品二百七十余種あるに至れり、其中に於て名の最高きものは、乱(らん)獅子、〈花切れて弁の数多なる者お雲なり〉孔雀〈花筒より細き花弁の、長く延出たる者お雲ふ、〉重楼(てうろう)〈花筒より長き薹抽て、其端に菊の如き、花開くものお雲ふ、〉宇津河(うづかは)〈葉小さくして、厚く縮たる者お雲ふ、〉松島〈葉の黄色にて、青き斑の有る者お雲ふ、〉石下(せきか)〈数多の茎皆寄著て、一箇の扁き大茎と成て、枝の無く花の多く開く者お雲ふなり、〉縮緬〈花の細かに縮たるお雲ふ〉月暈(みかさ)〈花白くして、筒中の紅なるお雲ふ、〉浜千鳥〈其葉小くして花も小く、火しく花開ものお雲ふ、〉柳葉(やなぎば)〈葉細長くして、柳の如き者なり、〉風看(かざみ)〈其葉の糸瓜の葉に似たる者お雲ふ〉等なり、牽牛の花は琉璃色と白は古よりの常色なれども、今は淡紅、深紅、淡紫、深紫、淡藍、流黄(うすきいろ)等も有て、且又間道も綵纈も種々色の間錯たる者あり、花の形状も大小長短あり、弁切たるあり、切ずして縮たる有り、八重も有て変異愈出て、其名目お記すべからず、総て其筒の転じたるお茶台と名く、