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福富草紙
此女は七条のとね翁の妻にてさぶらふ、あやしのへひりの秀武、きなにばかされ、朝貌の実おすきたれば、そののちかくひ候へば、心おみさせ給くすりお給べき也、ひでたけと申すやつのわざにてさぶらふ翁おすかして、朝貌のみお十つぶいりすかせてさぶらへば、其後はらたれとけて、はざうのみづおいだすやうにつかまつれば、としおいたるものヽかくさぶらへば、なにおたのみ、さながらふべきぞ、うねべどの、たすけさせおはしませ、朝貌のみは、ひとつだに腹とくる物なるお、さてすきてんには、よき事ありなんや、さりともこの薬おすきては、けしうはあらじ、これおすかすべきなり、