[p.0473]
源氏物語
四十九/寄生
つねよりもやがてまどろまず、あかし給へるあしたに、霧のまがきより、花の色色おもしろく見えわたる中に、あさがほ(○○○○)のはかなげにてまじりたるお、猶ことにめとまるこヽちし給、あくるまさきてとか、つねなき世にもなずらふるが、こヽろぐるしきなめりかし、かうしもあけながら、いとかりそめにうちふしつヽあかし給へば、此花のひらくる程おも、たヾひとりのみぞみ給ける、人めして北の院にまいらんに、こと〴〵しからぬ車さし出させよとの給、〈◯中略〉朝がほおひきよせ給ふに、つゆいたうこぼる、けさのまの色にやめでんおく露のきえぬにかヽる花とみる〳〵、はかななどひとりごちて、おりても給へり、