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大和本草
五/菜蔬
蕃薯(りうきういも/あかいも) 閩書曰、万暦中、閩人得之外国、瘠土砂礫之地、皆可得種、蔓生如瓜萎黄精山薬之属、而潤沢可食、或煮或磨為粉、其根如山薬、皮薄而朱、今案に、此物長崎に多し、菓として食す、味甚甘し、寒おおそる故、他邦の寒土にうふれば消ゆ、暖地にうふべし、甚繁茂す、薬四に白蘞とてうるは蕃薯多し、弁別すべし、不可用、甘藷 蕃薯の類にて別なり、倭俗つくねいもと訓ず誤なり、つくねいもは仏掌薯也、甘藷は蔓草也、葉は蕃薯と蕺菜の葉に似たり、葉の形かくの如し、〈◯図略〉根は瓜楼根に似たり、根下にも短き蔓あり、根の余のひげなり、又鵝卵に似て大きなり、鴨卵のごとく小なるもあり、大なるは重一斤あり、長きあり、円きあり、夏月蔓長く生ず、其蔓の節地につけば根生ず、故に蔓お切て植れば根生じて活す、貧民朝夕飯に充つ、或蒸てほし、細末して糕とし糧とす、来年に至り久に堪へ、民食お助け、飢饉お救ふ、其利益大なり、是其功能の第一なり、