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重修本草綱目啓蒙
十九/柔滑
甘藷 りうきういも さつまいも しまいも〈讃州〉 とういも〈肥前〉 からいも はちり〈共同上◯中略〉本薩州より来る、今は東国にも多く種ゆ、土地お撰ばず、砂礫にも繁殖す、種る法は農業全書に詳なり、蔓生葉は梓葉(あかめがしわ)に似て鋸歯なくして一尖、或は三尖あり、質厚くして深緑色、新葉は紫色お帯ぶ、皆互生す、花は鼔子花(ひるがお)に似て大なり、色も異ならず、其根皮色白く、或は微紅、生なる時は肉白し、煮る時は黄色となる、是おりうきういも(○○○○○○)と呼ぶ、肥前にては、しろいも(○○○○)と雲ふ、甘藷中の下品なり、上品の者は薩州にあり、方言ぼけ(○○)、一名あかばちり(○○○○○)、〈肥前〉さつまばちり(○○○○○○)、〈同上〉此品甚寒気お畏る、故に東国にて蒔ることあたはず、其皮薄して紫赤色、煮る時はその肉色白くして黄ならず、味沙糖の如し、又肥前にもちばちり(○○○○○)、さくらばちり(○○○○○○)あり、皆上品なり、唐山にて甘藷の至て大なるものお、玉枕藷、〈群芳譜〉三家藷〈華夷花木考〉と雲ふ、増、〈◯中略〉蘭山翁しろいもお甘藷中の下品とし、あかばちり、一名あかいもお上品とするは誤なり、しろいもは緊実にして味甜美、最上品なり、あかいもは松疏にして緊実ならず、味甚だ淡し、甘藷中の下品なり、但あかいもは、収成多くして民用に益あるのみ、