[p.0483][p.0484]
茅窻漫録

甘藷此物人に益ある事、時珍綱目に詳なり、授時通考には、十二勝お載せたり、異邦には固より食糧に充つるゆえ、南方草木状には、藷糧とも見え、博聞類纂に、種芋三十畝、可省米三十斛ともいへり、又酒にも醸すと見えて、類腋に徐玄扈の説お引きて、甘藷可充〓実、可以醸〓酒ともいへり、制用によりては、酒にも作り、又葛粉餅の代ともなる、鈴木俊民が甘藷記あり、蕃薯百珍といへる書などには、百品の料理やうお載せたり、国中農民の制ある時に、家々に是お作り貯へおく時は、第一菜蔬の資となり、又米穀とおなじく荒年の助ともなるべし、琉球国には、其法制あると見えて、是お掘る時に、頭人帯剣にて男女に下知おなす事、此邦の農監田地お巡り、撿見するがごとし、或一故家に、琉球国より画き来る実図あり、左のごとし、〈◯図略〉彼地は、暖国ゆえ海辺砂地に栽えて、茎お生ずる時、其茎に土おかけおけば、その所より根お生じ、塊おなすなり、