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剪花翁伝
三/六月開花
縷紅草(るこうさう) 花の色極緋、英至て少く、葩五弁にして形ち俊に似たり、長六七歩に過ず、開花六月上旬、方日向ならんには、地一分湿りよし、方一分陰ならんには、地乾きよし、土撰ばず、肥油粕芽出し後より入べし、下種春彼岸よし、芽お出すことの甚遅きもの也、最早はえざるかと待かね、疑ひて必堀穿ち見ることなかれ、下種して十四五日目に生ずるあり、尚或は五六日或は十日廿日ばかりも、段々後れて芽生ず、又はえざるものもまヽあり、一時に出揃ふものにあらず、都て種の形ち長きものは此のごとし、午房人参の種なども亦同じ、葉の形ち眠草の葉に似て、至て細く長一寸許なり、猶蔓物にして、竹の枝或は草茎等お建副べし、是挿花の料なり、