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農業全書
四/菜
白蘇〈上方にては、えごまと雲也、〉白蘇(えご)は子お取て油にする物なり、雨具などお調へ、さし笠にひくも皆此油なり、其外用多し、灯油にして光よき物なり、是も白黒の二種あり、二色共に宜し、肥たる細沙地取分よし、すべて何土にても深く耕しこなしおき、苗四五寸の時畦作りし、地の肥瘠お見合せ、がんぎお切、一本づヽ種る間七八寸、或肥たる地は一尺余も隔、少深くうへ、糞は何にても有にまかせて多くも用ゆべし、厚く培ひ芸りなど、大かたにしおきても、少も草痛みもせず、よくさかゆるものなり、是なお牛馬のさはる物にあらず、畠の端道ばたなど、牛馬の喰ふ穀のふせぎとなるべき所にうゆべし、木かげ物かげ、屋敷廻りの、他の作り物の、かつてよからぬ所にも、大形には出来、殊に旱なが雨にも痛まず、秋大風時分はいまだ花咲ずしてつぼみ、葉の間にあるゆへ、風損も大かたはなし、小鳥は少々付といへども、他の鳥けだ物は、そこなはず、大抵の地にてよく作り合せぬれば、雑穀等の利分の及ぶ物にあらず、作るに造作なくして、極めて勝手よき物なり、土地余計ある所にては、多く作るべし、刈収る事、時分の見合せ肝要なり、若刈時分過れば忽に零落す、葉悉く黄になりて、本なりの子はやこぼれんとする時、朝露に刈取、下に筵お敷、其上につみ置、又上よりも筵などおおほひ、むして四五日して、葉くさりたる時、ふるひあげ葉お落し、下にむしろおしき、照日に一日二日干てうち取べし、其後又干打事、二三遍にして悉くおち尽べし、唐人は此油にて餅おあげ、又和物のかうばしなどにもすると見えたり、凡五穀三草などの外の作り物には、利潤是に及ぶ物すくなし、土地多き所にては、広く作るべし、若おほく作りては、内に取込事なり難きゆへ、胡麻の如く外にふきおき、能干たるお見て、筵お敷て打て取べし、