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農業全書
四/菜
紫蘇四五月葉おつみて、梅漬其他塩醤につけ、羹ひやしる種々料理多し、生魚に加れば魚毒おころす、又薬に用ゆるには、梅雨のやみたる後、二三日過て、未極暑に至らざる時、朝とく葉おつみ、日に干べし、暑にあへば、葉の色青くなる、青くならざる内に早くつむべし、或曰、六月極熱の中にかりて、半日日にほし、其後かげ干にし、ほし上て、俵に入おき、薬屋にうるべし、又葉よくさかへて是お取、多くかさねまき、わらにてゆひ、みそにつけたるは甚よき物也、是も八新の一つにて、古きは用ひず、明年の新しきが出来るまで用ゆる物なり、未実の房枯ざるお刈取て塩漬にし、炙りてさかな茶うけなどによき物なり、紫蘇子お取には、猶よく実りて、已におちんとする時刈取、下に筵かき紙などお敷て干、小竹にて打て実お取べし、是又薬屋にうるべし、葉も実も気お散し気お下し、性よき物なり、子は少いりてあへ物に加へてよき物なり、