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農業全書
五/山野菜
甘露子(かんろし)甘露子、又草石蚕とも、地瓜児とも雲、今俗にてうろぎと雲物なり、苗の時四五寸、長じて後は茎ながくつるのごとし、かどありて節ごとに葉向合て生じ、薄紫の小花おひらく、其節々より、土に根ざし、かいこのごとくなる白き根多く生ず、玉おつらぬきたるごとくつヾきて、白くすきとおりて、きれいなる物なり、味甘く煮て、茶うけ、くはしにもなり、あへ物、吸物其外に物などに入、料理色色あり、めづらしき物なり、殊に多く作りては、飢おも助るものなり、〈多くひろがる物にて、根も多く出来るなり、唐の地にては多く作り、飢お助ると記せり、〉種(うゆ)る地の事、甫の少日かげの所お畦作りし、夏月に麦ぬかお多く覆て糞とす、一尺余り間お置てうゆべし、芸り培ひ、廻りおも草なき様にきれいにし、又上より麦糠お覆ひおけば、かぎりなくさかへて、才なる甫の端にうへても、其根たくさんにいでくる物なり、浄く洗ひ、かはかして、蜜に漬、醤に蔵して、甚よき物なり、土地広き所にては、多く作りて、飢お助くべし、陰地の肥たるによし、木かげなどにも種べし、やせ地かはきたる地によからず、