[p.0499]
広益地錦抄

羅勒(らろく) 春種おまく、尺にたらぬ小草也、草立葉形枝ぶり迄、とうがらしの草に似たり、五月はなさく、花形穂のごとく一年草にて冬は枯る、二月種お蒔、二葉にはへ出るより、薫香自然にありて蘭のかほりなれば、草花に名お蘭香とも蘭草とも雲、実は小細(こまか)にして極て小粒也、眼目に物の入りたるに此実お入る、目のごみお残らずとりて、目の薬なりと雲、俗に目帚(めばうき/○○)ともいふ、小草にてあひらしく、鉢にうへて愛すべし、庭に植て不断薫香せり、