重修本草綱目啓蒙

十/湿草

茺蔚　めはじき(○○○○)　にがよもぎ(○○○○○)　益母草(やくもさう)〈通名〉　一名千層塔〈医宗粋言〉　臭鬱草〈夏枯草、正誤、〉　負担〈附方〉　透骨草〈救急本草〉　天芝麻　鬱臭苗〈共に同上〉　目非也叱〈郷薬本草〉　野蘇子草〈訓豪字会〉　反魂〓〈担州府志〉　小胡麻〈本草必読〉　臾〈通雅〉自生のもの原野に多くあり、秋中子落て自ら苗お生ず、初は地に就て叢生す、葉形円にして岐多く、草烏頭葉に似て薄軟にして毛茸あり、春以後は薹お抽て漸く高く五六尺に至る、茎四稜にして大麻(あさの)茎の如し、葉対生す、茎上の葉は漸く長く、梢の葉は艾葉の如くなり、脚葉の形円なるに異なり、夏秋の間葉間ごとに、節に多く並びて花お開く、大さ三四分、淡紫色にして微く紅色お帯ぶ、形積雪草(かきとほしの)花の如し、花後実お結ぶ、蕚ごとに四粒あり、集解に如同蒿子(しんきく)と雲によく合へり、即茺蔚子なり、その形小長にして四稜あり、唐山よりこれら巨勝子と名て渡す、漢渡の偽物なり、巨勝子は烏麻(くろごま)子なり、故巨勝子円には烏麻子お用べきことなるに、世上の売薬巨勝子円に多く茺蔚子お用るは、舶来の巨勝子偽なるによりて誤るなり、時珍も薬四往往以作巨勝子貸之と雲、本草必読に、近世以茺蔚子為小胡麻、遂竟称巨勝以訛、伝訛不可勝言と雲、巨勝は茺蔚に非ること明に弁ぜり、又胡麻集解に詳なり、然るに本草新編には、巨勝子非胡麻と雲は大なる誤なり、薬四に売るもの皆和産なり、苗お益母草と雲ひ、実お茺蔚子と雲、苗お売るに多く鉄刀にて挫て乾かす、然れども此草は銅鉄共に忌む、故に自製して用ゆるにしくはなし、