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重修本草綱目啓蒙
九/芳草
香薷 いぬあらヽぎ(○○○○○○)〈延喜式〉 いぬえ(○○○)〈和名抄〉 ねずみあぶら(○○○○○○)〈奥州◯中略〉今にては和漢通名、俗になぎなた香薷(○○○○○○)と呼もの真物なり、大小の二種あり、共に俗になぎなたかうじゆと呼ぶ、宿子地に在て春自ら生じ、夏以後長ず、方茎にして枝葉対生し、毛茸あり、九月に至り、高さ三四尺或は一尺許、枝梢ごとに花お開き実お結び、熟して苗根ともに枯る、小香薷(○○○)は葉の形小く長し、黄荊葉(にんじんぼくの)に似りと時珍も言へり、黄荊は牡荊なり、牡荊は五葉一帯なるものなり、その一葉離したるに能似たり、爵床葉(いぬかうじゆの)よりは長く、香気甚し、その穂長さ一寸余、闊さ三分許、みな一辺に連りて小花お綴り、微く反張す、故になぎなた香薷と雲ふ、その色紫或藍色お帯ぶ、大香薷(○○○)は葉円大にして荏葉の如し、其穂闊長淡紫色、深山幽谷に生ず、其香気小香薷より劣れり、薬には小お用ゆ、薬舗に售るもの二品あり、一は夏月葉お採り収むるものお葉香薷(○○○)と雲、これには爵床葉お混ぜり、一は秋月穂お採り収るものお、なぎなた香薷と雲、これ真にして偽雑なし、是皆小香薷なり、大香薷は薬舗に出さず、