[p.0507][p.0508]
重修本草綱目啓蒙
九/芳草
爵床 いぬかうじゆ(○○○○○○)此いぬかうじゆは原野に甚だ多し、高さ一二尺、其茎方にして香薷よりするどなり、枝葉対生す、香薷葉に似て短くして毛少し、葉お揉で初嗅げば微しく香気あり、再かげば臭気お覚ゆ、八月枝梢に花お開く、紫蘇の穂のごとくして小く、香薷の穂に異なり、長さ三四寸許、淡紫色、花の大さ一分に盈たず、花後実お結ぶ、其蒂の形紫蘇に同じ、子熟して苗根共に枯る、又白花なるものあり、此外にいぬかうじゆと呼もの数多し、増、一種小葉のものあり、泉州地方海に近き渓澗流水の傍に生ず、茎方にして高さ五寸許、葉茎に対生して、全く爵状の形に似て小なり、臭気なし、陸地に栽て能く生ず、一種地黄葉のいぬかうじゆと雲あり、高さ二三尺、葉に皺多く、地黄の葉に似たり、秋に至て穂お生ずること三四寸、相似て大なり、又桑の葉に似て茎に互生し、淡緑色にして高さ一尺許なるものあり、これもいぬかうじゆと雲、又救荒本草の風輪菜もいぬかうじゆと雲、同名なり、又風輪菜に似て小葉にして直立せざるものあり、これもいぬかうじゆと雲ふ、