[p.0513]
重修本草綱目啓蒙
九/芳草
薺苧和産詳ならず、ひきおこしに充る古説は穏ならず、ひきおこしは一名えんめいさう、とんぼさう、〈大和〉むらたち、〈仙台〉おろとヾ、〈予州〉おろんとヾ、〈阿州〉おそど、〈土州〉山野に多し、春宿根より叢生す、その苗甚だやまはつかに似たり、葉はやまはつかに比ぶれば、稍長くして尖り、色浅くして白毛あり、秋枝の末ごとに花お開く、やまはつかより後れ、八九月に開く、穂はやまはつかより長大にして枝多し、花は形小くして色浅く、牡荊花(にんじんぼくの)の形色に似たり、又紫花なるものあり、皆その茎葉甚苦し、故に仙台にて虫おさへの薬に用ゆ、臓器薺苧は味辛温と雲ひ、又可為生菜と雲ふ、ひきおこしは味苦く且臭気ありて、生食すべきものに非ざれば、薺寧にあたりがたし、