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甲子夜話

楽翁の話られしは、世に一富士二鷹三茄子と謂ことあり、此起りは神君駿城に御坐ありしとき、初茄子の価貴くして、数銭お以て買得るゆえ、其価の高きお雲はん迚、まづ一に高きは富士山なり、その次は足高山なり、其次は初茄子なりと雲しことなり、彼土俗は足高山おたかとのみ略語に雲ゆえなるお、今にては鷹と訛り、其末は三物は目出度ものおよせたるなど必得、画にかき掛て玩ぶに至るは、余りなることなり、