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成形図説
二十五/菜
唐芥(たうがらし)〈即番椒也、芥菜に依て命ぜし名なり、里言にまづものこなしなども呼べり、〉 南蕃胡椒(なんばんこせう)〈或説に原その種お蕃国より漢国に伝ける故にかくいへり、我東北国にてはたヾ南蕃とのみいひ、九州地方にては胡椒とのみいふ、胡椒は即蕃地よりいづる蔓草の実にして味辛し、故に此物の辛よりその名お借用るなり、〉 高麗胡椒(かうらいこせう)〈或曰、豊太閤朝鮮お征れし時に、此種お携来しより、この名ありといへり、◯中略〉大なるは実の長さ五六寸にいたる、幹立は七八尺に近し、頃間花師養得て目(なつけ)て一丈紅(○○○)といふ、小なるは鳩爪の如し、目て鷹爪(○○)といふ、円大なるは王瓜(からすうり)の如く微尖あり、目て胡頽(ぐみ/○○)胡椒(/○○)と雲、円小なるは南天燭子の如し、その実上に向ふおば天上守(てんしやうもり/○○○)など呼べり、〈遵生八揃雲、白花子儼如禿筆頭、〉又下に垂るものお垂(さがり/○)胡椒(/○○)とも、下(くだり/○)胡椒(/○○)とも称ふ、一種短肥にして味辣からずて甘きものあり、是お甘唐辛子(あまたうがらし/○○○○)といひ、黄熟のお黄唐辛子(○○○○)といひ、金橘の如きのお金柑唐辛子(○○○○○)など呼べり、其種族多く皇国に入て化生れるなり、蓋暖地に生ものは最辣し、本藩〈◯鹿児島〉南辺に生ふるは愈太く愈辛し、其木冬お経て稿れず、又南島に及び沖縄に至りて、皆木本となりて、高さ四五尺に長つヽ、宛然として一灌木に似たり、さらば椒属にして、南方の水土に応ひ、その本邦西土に入ては、自草本と変れるにぞ、亦奇むべし、