[p.0530]
農家備要

馬鈴薯(なんきんいも)茎の高さ凡一尺五六寸、状ち如図、〈◯図略〉茎葉共に毛茸あり、春三月の初め球根お分ち植置く時は、一根より二三茎お出し、六七月に至て、根に三四の球根お生ず、培養至て易きものなり、糞も水糞一両度にてよし、地合は先砂地お好む、然れども何れの地にも能く生育するもの也、甘薯に比すれば、甘味少く、皮も至て薄く、風味格別勝れしものなり、甘味少きお以て、酸敗液お醸す事なく、余分に喰ふてさまたげなし、今長崎其外諸国に培養し、酒お醸し味噌お作る所多し、又甘薯より永く貯ふ事出来るもの也、